匠の息吹 ~醸造家 廣田氏が語る、禅利2025の新たな挑戦~

はじめに – 2025 禅利己巳(KINOTOMI) 新作について
– 2025年の新作に込められた特別な思いや意図があれば教えてください。
禅利も今年で3年目。自分の中で変化への挑戦をテーマにしました。
乙巳〈KINOTOMI〉のが意味する、芽が出る草木のように“新しく生まれ変わる瞬間”のような…。
京都の水と祝米の良さをそのまま活かし、透き通った味わいの中にしっかりした旨みを残しています
一歩踏み出す人の背中を、そっと押せるようなお酒になれば嬉しいですね。
– 今年の禅利を一言で表すと?
「静と動が溶け合う透明感」ですかね…。穏やかな香りの奥で、米の旨みがゆっくりと広がります。

製造のプロセスと技術的な特徴について
– 今年の仕込みは例年と比べてどのような特徴がありましたか?
祝米が例年より溶けにくかった分、吸水歩合と仕込配合を細かく見直しました。水を多めに吸わせ、米を溶けやすくすることで祝米の魅力を引き出しています。結果として香味に奥行きが生まれ、輪郭のある膨らみが出せました。
– お米が溶けにくかった理由は?
新品種『新たな祝い(祝2号)』の特徴です。
溶けにくさ自体は弱点ではなく、仕込配合や品温管理をコントロールすれば透明感がある中で膨らむ酒質につながるポテンシャルをもっています。
– 今回の仕込みで特に苦労した点や挑戦したことはありますか?
仕込み初期から醪の数値が過去と全く違い、手探りの連続でした。品温管理や吸水歩合を秒単位で調整して発酵と糖化のバランスを探りました。
– 数値が想定外だったとき、杜氏としてどう対応しましたか?
醪の品温調整と必要に応じて水を加えます。ただ最終的には数字より味覚で判断します。
– 「香りを華やかにする」とは技術的にどういうことですか?
もっともシンプルなものは酵母の選定です。異なる酵母を使用するだけで香りの骨格が変わります。
今後挑戦してみたいことの一つです。
– 伏見の水の特徴をどう捉えていますか?
鉄分が極めて少なくカルシウムやマグネシウムなど硬度成分をほどよく含んでおり、発酵がゆっくり進みます。酒に滑らかな口当たりと上品なキレを授けてくれます。

醸造家としての「感覚」や「直感」
– 数値では測れない「感覚」や「直感」とは?
「数字は甘いが舌は辛い」など矛盾を感じたら、舌の感覚を優先します。上槽や火入れのタイミングなどは感覚が大切です。最後は自分がうまいと思ったタイミングです。それが全てです。
– 菌と対話している感覚はありますか?
はい。醪期間中は品温管理や水を加えるといった調整をした後は『おいしくなってくれ』と願うのみ。酵母の働きを感じながら、微かな気泡の変化に目を凝らしています。
– 酒造りの過程で最も大切にしていることは何ですか?
「当たり前を徹底的に丁寧に」。洗米の秒単位管理や温度の0.1℃調整など、基礎の反復が味の核を作ります。
2025年の禅利の出来栄えとこれからの未来について
– 新作の出来栄えで特に満足している点は?
正直言うと、禅利史上一番美味しいと感じています。搾りたての段階で、香りと味わいの膨らみが同時に感じられて、クリアな輪郭と乙巳が示す゛内なる強さ″がうまく重なったと感じています。
– 2025年の新作は、禅利の歴史の中でどのような位置づけになりますか?
先ほども言いましたが、今までの最高傑作だと思います。
「十干十二支」シリーズを通じて蓄積してきた技術と感性が、“変化への挑戦”というテーマで結実した節目の一本です。
– 5月以降にお届けする酒はどんな味わいになりますか?
今は澄み切ったフレッシュさが際立っていますが、時間の経過と共に香味がまとまり、丸みを帯びた厚みが増します。季節が進むごとに違った表情をお楽しみいただけるはずです。

禅利の価値と哲学
– 廣田さんにとって禅利とは?
飲んだ瞬間に「うまい」と素直に感じていただけること。その一点に、私と蔵人全員の情熱を注ぐ存在です。
– 守りたい伝統と取り入れたい革新は?
洗米・製麹といった基本の丁寧さは決して崩しません。一方で酵母の選択や品温管理、仕込配合の探求等、香味の幅を広げる試みは躊躇しないつもりです。
– 10年後、20年後も愛される酒にするために大切にしたいことは?
造り手が楽しむ心です。蔵の空気が和やかであるほど、酒もやさしい表情を見せてくれます。
禅利の価値と体験
– 禅利を飲む方に体験してほしいことは?
まずはグラスに映る透き通った輝きを眺め、香りをゆっくり吸い込み、そして味わいの中に京都の四季と私たちの愉しさを感じ取っていただけたら嬉しいなと…。
– 他の日本酒と比べた禅利の独自価値は?
京都・亀岡産オーガニック祝米と伏見の地下水「伏水」が織りなす、キメ細やかな透明感と余韻の柔らかさです。
– 世界的な飲料文化の中で禅利の価値は?
禅利は、日本人が昔から大切にしてきた『侘び寂び』をそのまま日本酒に写したような。
静かながら芯が強い。だからこそ、国や料理を選ばず、世界中の食卓にもしっとり寄り添える一本になると思っています。

2025年立夏 禅利「乙巳」抽選予約販売スタート
2025年 乙巳 KINOTOMI ー 移ろう時代を越えて、揺るがぬ真を刻む
十干十二支が織り成す22の組み合わせは、万物の循環を表します。すべてが変わりゆく諸行無常の中で、禅利は四季の移ろいに寄り添い、その奥には変わらない深い美しさと調和の精神が息づいています。
禅利の一杯が、ただの日本酒を超え、移ろう時の流れと共に本質を見つめ直す特別な一杯となりますよう。今回の抽選では、この天地の調和にちなみ、予約本数を「22本」限定とさせていただきます。立夏の光の中、「禅利 十干十二支 2025乙巳 KINOTO MI」が皆様の日常に新たな気づきと、次なる一歩を踏み出す静かな力をもたらすことを願っております。風薫る季節、どうぞ健やかにお過ごしください。
抽選応募期間:2025年5月5日(月)~5月20日(火)
当選発表:2025年5月22日(木) / 商品発送:5月23日(金)
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