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禅利「祝米」農家 八木氏が語る-禅利への想い

禅利のはじまりは、ここにある。

──そう語るのは、京都・亀岡で禅利の酒米に取り組む「株式会社アグリにのうみ」の八木さん。
禅利に使われる酒米が育つ田んぼは、全体15ヘクタールのうち、たった0.5ヘクタール。
その中でも有機栽培の区画はほんの一部で、まさに一期一会のような存在だ。
この地には、川の水ではなく、山から染み出す冷たくて澄んだ水が流れてくる。

雑味がなく、やわらかいその水は、稲にとっては決して楽ではないが、ゆっくりと養分を吸い上げ、一本一本に力を蓄えていく。
「水が良ければ、米は応えるんです」
八木さんはそう言って、目を細める。
農薬や化学肥料に頼らず、雑草を抑えるために水を深く張り、稲の呼吸を妨げないよう酸素にも気を配る。
土づくりがすべてを決めるからこそ、植えてからできることは少ない。
稲にまかせる、その潔さが、禅利の輪郭を静かに形づくっている。

そもそも、祝米自体の生産量は非常に限られている。
国内の酒米全体における割合は、わずか1%。その中でも有機栽培となるとさらに希少で、全体の0.01%という、まさに奇跡的な存在だ。
それは、高度な技術と膨大な手間、そして自然との対話によってはじめて実現する、農家の覚悟の証でもある。
その貴重な米を用いて仕込まれた禅利は、ただの酒ではない。
自然と人が響き合いながら生んだ、唯一無二の一滴。
特別な深みとやさしさが、グラスの奥から静かに広がっていく。